当をした。彼は、叱りつけて水をとりにやった。思うようにならない老年の、ぎごちない指を縺らせながら自分の帯を解いて傷を縛った。そして、絶間なく、スーラーブの開いている口に頬をつけて息のあるなしを確めた。二人の卒が、スーラーブの体の上に、彼等の上衣をひろげて持ち日除けを作った。
 ギーウの姿が目に入ると、ルスタムは、遠くにいるのに、
「どれ、どれ!」
と手を出した。
 ギーウはすまない顔をして首をふり叫んだ。
「――ない!」

        五十二

「どうして? 王の処にない筈はない。きのう、儂は袋を確かに見た」
「袋はある。あるのだが――」
 ギーウは、ルスタムの耳に囁いた。
「王は渡さない。ツラン方に卿の息子がいたなどということはない、というのだ」
「!」
 ルスタムは、拳を握って立上った。
「よし。儂が行って来る」
が、痙攣が起り出したスーラーブの姿を見ると、ルスタムは、砕けるようにギーウの手をつかみ、たのんだ。
「どうか見てやってくれ。すぐ来るが。――それから、万一訊いても儂の名はきかせてくれるな」
 ルスタムは、王の天幕まで、つきない砂漠でも横切るように永くはかどらなく感じた
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