快を覚えた。彼は、老獪な戦士らしく、ここで対手の心算を逆用することを企てたのだ。組んでしまうと、こっちのものだという安堵がルスタムに湧いた。彼は、引組んだまま、積極的にはちっとも攻撃をとらなかった。年寄の根強い支持に、若者は癇癪を起した。スーラーブは、一二度肩で、対手を誘うように押しかけて見た。然し、ルスタムは、心の平静を失わず、ゆるめもせず、さりとて力を増すでもなく、万力のように彼をしめつける。
 スーラーブは、対手が何処に勝めをかけているか、忽ち感付いた。彼は強て自分も気を鎮め、どうなってもかまわない、疲れないだけの消極的態度を守ろうとした。けれども、凝っと引組んでいるうちに、スーラーブの胸は燃えるようになって来た。云い難い嫌厭が敵に対して感じられて来た。この執念い、詭計に富んだ古戦士は、何処まで自分と目的の間に立とうとするのか。きのうの惨めらしい様子、憫《あわれ》っぽい涙なども、案外わざともくろんだことかもしれない。あのことで自分は昨夜どんなにフーマンと激論したか。眠れもしなかったのを此奴は知るまい。
 スーラーブは、我知らず、ぐいぐい対手にのしかかった。彼は、もう、邪魔な大石で
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