も道傍からどけようとするような単純な熱中に駆られた。
 けれども彼が押しても引っぱっても、イランの老戦士は根でも生えたように動じない。焦立つな、焦立つな、という警告は、スーラーブの心の一方で絶えず繰返されている。彼ははっきりその必要を知っているのだが、対手が余り平然としていると、憤怒が湧き、我にもなく四肢をいきませてしまうのだ。
 スーラーブは、この勝負が、まるで、腕の争いより、一種心の組み打ちになったのを感じた。そう気がつくと、不意と冷静な気分が還って来た。スーラーブは、さりげなく素直に手脚の力を緩めた。それにつれ、対手もほんの僅か隙を作った。とっさに、スーラーブはそこにつけ入って腰をひねった。足がらみが利き、対手はきれいに倒れた。が、イランの戦士は、執念深く、彼の腕を掴んで離さない。スーラーブは、片手を引っぱられ、駆けるようにのめって、どっさり対手の上にかぶさってしまった。スーラーブは、はっきり自分の危険を感じた。彼は渾身の力を搾って、下になった敵の抱擁から体を引離そうとした。彼は、めちゃめちゃに脚で地面を蹴り、対手を蹴り、組合ったまま、ごろりごろりと転がった。
 ルスタムももう必
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