王は、騒ぎ立ち統一を失った者共の心をぐっと収攬するだけの精神の力を欠いている。結果はイラン全土の無統帥とツランの侵略になりかねない。愚な者達は、事実は朽木のように弱くなっても、ルスタムがいる、ということさえ知っていれば安心し、人並の勇気を保っているのだ。彼は、総ての事情を苦痛に感じた。省みると、自分の今度の行動には嘗てなかった夥しい私情が挾まれていた。抑《そもそ》も出動を肯じた動機さえ甚だ無責任な好奇心に誘われたものであるといいたい。また、あの若者が戦いを挑んだ時、何も自分が出るには及ばなかったかも知れない。ギーウが視た眼の心を見ない振りしたのは、自分の失望や寂寥やで、むしゃくしゃしたまぎれの、鬱憤にかられてであった。自惚《うぬぼれ》も手伝っている。
 本当に冷静に公平に、イランのためを思えば敢てしないことに手を出したようなものだ。
 ルスタムは、その責任を果すために、自分が明日こそ、あらいざらいの力を搾って働くのは当然な義務だという、道徳的な結論に達した。自信はないが、最善を尽すしかないという覚悟に或る安心が伴った。それにしても、彼には解けきれない一つの疑問があった。何故、血気に
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