れども、自分が起きなおり得たのは、ツランの若者の立った後であるのを見られたことを思うと堪えられない気持になった。彼は、数十年来保って来た戦士としての自信が、一時にざくざくに砕けたのを感じた。自分の予覚は当った。この戦いには矢張り出ない方がよかった。けれども、ルスタムは、今はもう自分がぬきさしならぬ立場にあることを知った。どうにでも、始めた勝負の片はつけなければならない――自分が死ぬか、あの若者に傷を負わすか。
 然し今日のことを考えると、ルスタムは、到底自分に身を全うする希望は繋げなかった。イランの全軍が自分に信頼して任せているような結果、自分が最初自分に恃んで乗り出したような方向に、決して実際は終りそうになく思えた。戦うために生れて来た者だ。戦いで死ぬのは、彼一箇人の感情から見ればさほど厭うべき、悲しむべきことではなかった。そうとなった暁にはただは死なぬぞ、という反動的な勇気を持ち得た。ルスタムの重荷に思うのは、自分に迷信的な威力をあずけている、無智な兵卒等の擾乱であった。彼等は万一ルスタムが殺されたと知ればギーウの豪気を以てしてもどうにも出来ない意気沮喪に陥ることは彼の目に見えた。
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