前方には、陣地で燃く篝火のチラチラ光る焔が見え、パチパチ木のはぜる音が聞え始めた。
スーラーブは、自分の心にある妙な優柔不断めいたものを、しんから苦々しく思った。対手が真実父親であったため、自分の気持にああいう現象が起ったのではなかろうかなどという疑問は毛頭起らなかった。彼は、父が、自分のような青二才に敗けようなどと夢想もしなかった。
四十四
けれどもこの時、スーラーブが後を振かえり、透視力のある瞳でイランの陣を瞰下すことが出来たとしたら、彼は思いがけない一つの光景を見出しただろう。
混雑の頂上にあるイランの陣の間を、スーラーブの膝の下にされた今日の老戦士が、一人で、いそいで、自分の幕営に戻ろうとしていた。
彼も、他の将と顔を合せるのを厭うらしく、物蔭を、厳しい様子で歩いた。武具をつけたまま、兜だけをとったギーウが大股に数間あとからその姿を追っていた。燃き始められた篝火の間に黒く、見え、隠れするルスタムの後姿には明かに或る感情が表れていた。苦しい、激しい、暗い感動を、やっと意志で制し、威厳の裡に封じ込めているように、肩つきや頸が硬ばって見えた。脚ばかりは、
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