き、ゆっくり一盃酒でものめば癒る種類のものではなかった。自分の目的は、はっきり目の前にあるのに、曖昧な、ちぐはぐな何ものかで遮られ、一思いにそこに至れない歯痒さ、焦立たしさが彼の感情を重くしているのであった。今日の一騎討ちの結果についてもスーラーブは、余り後口のよい気持ではなかった。慧眼な傍観者は、確に、自分が対手を倒した時と、立ち上った時との間に、充分剣をぬき始末をつける余裕のあったのは認めているだろう。躊躇したのも見たろう。意識して対手を助けようとしたと云われても、スーラーブは、その点を明瞭に説明する言葉が自分にないのを自覚した。父の連想があるので、何んともいえず組敷かれた敵の年寄りをあわれに思ったということはある。けれどもあの瞬間、自分の心に、助けようという、はっきりした意志はなかった。殺しきれないうち、局面が変ったのだ。自分の目的に早く達するためには、あの時、あの老戦士との勝負をさっさと片づけた方が好都合であった。本当の愛からでもなく、ほんの心のはずみでああいうことになり、而も、その結果について、責任ある説明を要求される立場にある自分を考えると、スーラーブはくしゃくしゃした。
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