ば、何! 雑作ない。卿には若さという味方がついているもの。儂ももう一度、こんな胸を持って見たいな」
そして、フーマンは、スーラーブのむき出しの胸を好もしそうに眺め、女についての戯言を云った。スーラーブは、フーマンが、酔いに紛らせ内心では確かり云うべきことの選択をしていると感じた。酒が彼の唇を自由にしているだけ、楽に、要点をそらして下らない題目にすべり込める。
明日の合戦に、どうしようという考えで、彼は黙ってしまった。単に一人の敵として見ても、イランの戦士は剛の者であった。力量その他が、スーラーブに或る懼れを抱かすほど匹敵していた。今回の経験で見ても、最後に勝負を決するものは腕の違いでなく、精力と運だけの問題とさえ思える。ルスタムでないなら、スーラーブは、この敵に命は遣りたくなかった。遣らないためには殆ど天運が自分の味方になってくれなければならない。スーラーブは、フーマンが何時の間にか、自分の傍を去ったのさえ知らなかった。彼は一人で苦笑いを洩した。そして、疲労を恢復させる必要から、すぐ寝台に横わった。が、眠りはなかなか来ず、漠然とした不安が、夜の幕営の裡で彼の心にのしかかった。戦場で
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