の音がした。続いて、二打ち、三打ち、四打ちめの羯鼓に合わせ、ツラン軍は足を踏み轟かせ、裂けるような鬨《とき》の声をあげた。空気の顫えが鎮まらないのに、イラン軍で、熱いような太鼓を打ち出した。急調に、じっとしていられないように、全軍が鯨波をあげた。蒼白い、神経質な表情を湛えていたスーラーブの顔に、燃えるような輝きが出た。彼は鋭く眼を配り、左右を見ると、手綱をかい出し、とっとっとっと、一騎で、両軍の中央に騎り出した。亢奮が感染し、乗馬は、敏感に鼻翼を震わせては、深い息をする。スーラーブは、轟きの余波の消えるのを待って、高く、馬を前脚で跳上らせた。彼は、鉾を右手に振かざし、大きな輪乗りで敵の前面を騎り廻した。ツラン軍から熱烈な喊声が湧いた。スーラーブは、その音波を劈《つんざ》く高声で敵に叫びかけた。
「イランの王、カイ・カーウス! 出会え、出会え、流されたツラン人の血は卿の血で償おう!」
両軍に、明かな動揺が伝わった。誰か出て来るか。スーラーブは、尚も輪騎りをしながら、ツラン幾千の眼が、煌いて、自分の背後から前方に瞠られているのを感じた。彼は、カイ・カーウス自身の出ないのは知りきっていた。
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