ぬきにした。その点で最もつよく新日本文学会の弱点の示された大会でもあった。

 わたしたちは、率直に、民主主義文学批評の方法は、こんにちではさびついた部分をもっているという事実を認めていいと思う。多くの民主的批評家を我ながらぎごちなく感じさせているにちがいないさびつき[#「さびつき」に傍点]の徴候は、一九四七年第三回新日本文学会大会にあらわれた。この大会で民主的な文学作品について報告する責任をもった佐多稲子は、小説部会の評価が各作品について全く対立的である場合が多い、評論部会は、民主的文学の評価の基準について検討をするように、と要求した。評論部会はそれを課題としたわけであったが、様々の理由からそれはたやすい仕事でなかった。民主的な評論家たちの次のより深い危機は、太宰治の死に際して歴然とした。太宰治は、現代の広汎な読者の心理に影響をもっているから、簡単にやっつけてはいけないというような理由で、民主的評論家の発言がひかえられた。
 考えてみれば、これほど妙なことはないわけだった。大衆の心理に――理性でもなければ、歴史的認識でもない破壊された生活気分に――つながるものであればこそ、民主的な批
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