)のうちに、集団的行動とその経験のうちに、その人としての人間的実感、人生への発言をどのように整理し表現してゆくかという課題である。民主的な文学のきのう、きょう、そして明日を通じてこの困難は簡単であり得ない。なぜなら、職場で積極的な労働者は殆ど常に組合であれ何であれ、自分たちの組織で有能なひと達であり、ある意味で指導的な人たちである。すべての組織の活動がその日々の現実において、いつもその人にとって歴史における労働者階級の任務のよろこばしさ、勇気、よりひろく高い階級の知慧の感じで実感されるとは限らない。当然矛盾が見出され、失敗とよばれ成功とよばれるものについても疑問が湧き、自分と周囲との見くらべがおこる。それこそ、階級人としての精神――肉体あるイデオロギーの成長のモメントである。ところが、かりに、その人が労働者であり、組合員であり、また他の組織に属しているという条件から、その多忙な活動について、むずかしく考えることなんかいらないんだ、云われることさえどんどんやればいいんだ、という風に習慣づけられるとしたら、そのひとの階級人としての成長とその文学の可能はどうなるだろう、ここに階級的民主的文学
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