だろうか。小さい柿の芽生えを、それがまだ小さいから、と無視するだろうか。割りあてられた話を終っていたわたしは発言を求めて「小さいものの意味」についてのべた。政治が、わたしたちの社会的な良心と道義、そして良識の判断に土台をおいた動きである以上、明日に育つきょうの小さいものを正しく評価するということは、全く当然なことではないだろうか。政治について婦人のもたなければならない自覚をもてと云われるなら、それは、政治の事大主義に膝を折ることではなくて、小さいながらまともな種《たね》をより出して、それを成長させる地道な見とおしをもつことではなかろうか。
ウォーレスの進歩党綱領が発表されたとき、わたしはあの日の光景を思い浮べた。そして小さいものの意義について切実に思った。日本の議会に圧倒的多数を占めて政権をもった政党が、全くその名を穢辱し、投票者たちを侮辱して公衆の目前にさらした数々のみにくさを考えながら。
吉田首相は、新内閣を組織し、議会を再開した。しかし一般施政方針について演説しない。そのことで紛糾している。施政方針を語らないままで、公務員法案は一気にとおそうとしている。そういう妙なことは何
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