しい女子失業者は、同じく第二十五条「国民は総て勤労の権利を有す」という条項を、ただ書かれた文字として読んでいるだけではない。
日本の真の民主化のために、なお封建的なのこりものの多く容認されているこの草案は不備なものではあるけれども、それでも、人民の権利と業務との規定では、これまでの日本憲法に明記されることのなかった民主的要素をもっているのである。
この草案と照し合わせて、私たちの現実を見まわしたとき、すべての人民は、せめてここに云われている範囲までぐらい自分たちの生活が向上されなければ、これでは全く「人」以下だと思わざるを得ない。
私たちが、人として、故なく奴隷的労働や、その意に添わざる苦役をしないでよいことはこの草案にも云われている。かりに、この草案が決定したとき、政府はこれらの条項に対して、すべてが反対というに近い現実に対し、本当に、どうしようと思っているのだろう。この疑問は、幼稚な言葉であらわされるが、全く、どうしようと思っているかしら、と思う。
もう何年も、私たちは生きてゆくそのことを、自分たちの努力と分別とでやって来た。政府の力には、見当がついている。
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