殊な立場に固定され、その地位は世襲であり、一代にしろ華族というものが存在するのは、どういう矛盾であろうか。
 更に、この条項を眺めていると、私たちの心には、まざまざと先頃厚生大臣から発表された最低賃銀の規定が浮んで来る。男子三〇歳―五〇歳、四百五十円。女子一五〇円と。「人」といううちに、女子を含まないはずはない。人というなかに、三〇歳未満の青年たちがふくまれないというはずはない。女子の社会勤労が1/3と価づけられているのも不合理であるが、三十歳以下の勤労青年が、最低賃銀のきまりさえも与えられず、女子と共に、雇主にとってごくやすくてすむ労働力として公然と示されていることについて、若い人々は、どう感じているであろうか。
 モラトリアムで学生の学費一五〇円と制限されたが、この食糧難、住宅難、まして交通費の膨脹で、学生は帳面一冊買いにくいこととなった。文化の最も大切な資材である紙は決してやすくなっていない。印刷費は却って上って来ている。憲法草案第二十一条には「国民はすべて研学の自由を保護せらるべきこと」とあるのである。
 五百八十余万人の失業者、そのほかにかくされて深刻な社会問題となっている夥
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