現実の必要
――総選挙に際して――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)騰《あ》げられた。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年四月〕
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選挙が迫って来ている。人の気質によっては、こういうことに大して心をひかれないたちのものもある。そういう人は、これまで余り選挙などに熱中しないで、時には棄権もして来たかもしれない。信用出来もしない候補者に投票なんかしたくないと思って、良心的に棄権した場合もあったかもしれない。
しかし、四月十日にきめられている今度の選挙は、私たちに、どんな心もちを抱かせているだろうか。少くとも、これについて無関心ではいられないものが、私たちの生活全体の事情から湧き上って来ている。
理不尽な戦争を遂行させられて、日本の人民生活は、根本から破壊されている。しかも、幣原内閣は、それに対して決して皆の納得ゆくような方針を実現してはいない。にもかかわらず、現内閣は、よたつきながら、今倒れるか、今倒れるかと思われながら、とうとうモラトリアム公表という重大な危機さえ突破して、どういう
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