が、私たち全人民にとって深い関心事である所以はここにある。選挙前にこの草案が公表されたことは、或る意味がある。長い封建の習慣と、戦争中の圧迫とで、自分でものを考え、判断する癖さえ失くしている日本の多数者に、少くとも「人」は、どのような生きる権利をもっているかという標準を示した。その標準と、今日の底をついた非人間な実際との間に、どんな解決の道があるのだろう。そこに、誰しも新しい政府を思い、その順序として選挙を思い、しかも、真に人民生活の向上をはかる実力ある、自分たちの政治を渇望するのである。偽りない主権在民を、実現したいと思うのである。その現実の力のつよさで、戦争というものの根絶された日本の民主生活の完成を見たいと思うのである。
すべての人民が、今や自分の分別によって「人」たらんとしているのであるけれども、特に、青少年、婦人にとって、この選挙は、深い深い意義をもっていると思う。国民の中で、最も無権利である女性と青年たちが、戦争の最もひどい犠牲となった。働き盛りの男子が、赤紙一枚で数百万人も殺されたということは、じかに婦人と青年たちの生活の負担となって来ている。平和を確保し、人民社会を建
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