リー・ウーマンとしての暮しにおいても。
 女の仕事と職業とが性能の上からも一致し、正当な社会評価を求め得る気風が一般化されてこそ、女の生活は豊富になり、明るい力強さをもつと思います。当面生活の心配などなく、永年多額の金を修業につかうことのできたごく僅の女のひとたちだけが、いわゆる仕事から職業へ有利に移ることができるのだとしたら、私たち大多数の女にとって悲しい残念な事実ではないでしょうか。金のあるひとだけが金を儲けて得ているという今日の冷酷な原則がここにも形をかえてのぞいて来ているのです。
 インテリゲンツィアの若い女が勤労者として生活しなければならない必要は、昨今急激に増してきています。しかも、必要によって捕えた職業は常にそのひとの心から好きな仕事でないことが多い。女として職場での条件にあき足りぬことも多い。小学卒業したまま製糸工場の寄宿舎へつれて来られた小さい女の子たちは自分たちのおかれている悪事情さえ意識できない程度であるが、女学校以上専門学校出の職業婦人は、この点では敏感であり、人間としての自尊心もある。社会事情はその人間的なものを苦しめるし、傷ける。よろこんで働ける場合が本当に
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