たこの美くしい御客様のまわりをまわる。始め体の上にしんなりと被った紫の君の衣は藻のなびきにういてみどりの藻の上をうす紅の衣がただよって居る、その絵のような又とないものあわれな様子を想像しながら、
「美くしい人にふさわしい涙の多いは果ない最後であった、けれ共今更その骸をさらすのはあんまりむごいことで有る。あのままにしていつまでもそのしずかさをさまさないようにしてあげよう」
 涙の中に殿はこれ丈考えたけれ共、母君は只泣くばかりでどうにもしようがなかった。只
「ほんとうにすまないことになった、私のために……乳母も紅もあんなに世話をして呉れたのに、どうぞこの生る甲斐のない母をうらんで御呉れ」
 こんなことばかり云っていた。
「□[#「□」に「(一字不明)」の注記]業でございましょう、私の御世話をいたしましたのも若様の御なつき下さいましたのも生れる前から神の定めて御置きになったことでございましょう。私は誰も恨むはずの人はございません、只……只私の呪われた運命を思うのでございます……つくづくと……」
 紅は斯う云ってはじめて涙をながした。
「御前行ってね、そう云って御呉れ、池は何にもかまって御呉れ
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