桐の梢に秋は更けた。庭のやり水がかれて白い、洗われた石がみにくく姿をさらして居るのを人達は何か知れないものをさとされるような気がしてそれをじっと見ては居られないようで有った。
「この秋、若君は御なおりなされなければ悲しいことは有るに違いない」
 こんなたよりのない、あきらめたようなことばも誰云うとなく口々にのぼった。
「なまじ生きて居て悲しいつらい目に合わせるよりはね」
 涙も枯れたようになった母君は救の言葉を見つけたようにこんなことを云って居た。紅や乳母はこのことをきいて、
「一体だれがそんなことを云いだしたんでしょう」
「誰だか知らないけれ共、あんまりじゃありませんかネエ、私達はいじにも御なおし申さなくっては」
 怒りながらこんなことを云い合って居た。
 どことなくしずんだことさら秋の悲しさの身にしみるような日の夕方、九月はもう二十日になって居た時の夕、紅は乳母にかわってもらって昨夜のてつ夜に疲れた体を几帳のかげにそのまま横えてねるともなし、おきるともなしにかおにかんばしいかおりの額髪をかぶせたまんま居ると、そろっと足音をたてて近よった人はその額がみをよけて横になって居る体を子供を
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