ろの人達をつつんだ西[#「西」に「(ママ)」の注記]の対は読経の声と絃の音と溜息の声につつまれて一日一日とたって行くので有った。とうとう悲しみの中に五月雨は来てしまった。じくじくと雨の人々の涙のように降る日も、きまぐれにカラットしたお天気になった時も、光君はうす明りの部屋の中に美くしい日化粧の姿をよこたえたりして、紫の君の人形をしっかりとかかえて美くしいうわことを云いながら只淋しい秋の来るのをまって居るばかりで有った。

        (十四)[#「(十四)」は縦中横]

 五月雨が晴れると急に夏めいてようやく北にあるこの館にもむしあつい風は吹くようになった。人々の夏やせはいつもの年よりは、目立って見えた、蝉もないた。日ぐらしも。草むらにほたるは人だまのようにとんで、朝がおは朝早くさいて日の上らない内にしぼんでしまった。こんなことを毎日くりかえしてものうい夏にそぐわぬ力のない日を送って居る内に、もう、桐の葉の一葉又一葉凋落の秋をさとすように落ちはじめた。
「もう秋ですものネー、春の御宴の時からもう冬をこせば一年になりますもの」
 人達は今更のようにこんなことを云い合った。
 薄の穂に
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