まあいい、美くしい可愛い、私の死んだ時にネエ、雨が降って花が散って、人は笑ってましょう」
何だか正気のようだと紅は思ってそっとそのかおをのぞいた。目はいつものように上ずって居る、かがやきもなく、只あやしくくもって居る、口元にはさみしいほほ笑みとかなしげなといきがもれる、手はふるえて居る。女は自分の事を云われて居るのかと思えばそうでもなし、そうでないと思えばいつの間にか自分のことを云われて居る、つきとばされたりなでられたりして暮して居るこのごろを、死んでしまいたいと思うほどつらく情なく、又はなれにくいほどのしゅう着をもって居た。紅はこんなことも思って見た。
「若様は正気がなくっていらっしゃる。思いきって、思いきって、思ってるたけを申し上げてしまったって、御なおりになってからは御存じないんだから」
けれ共今までながい間の年月包んでけにもさとらせなかった辛抱を今ここにすっかりぶちまけてしまうことはあんまりあっけなく残念にも思って居た。
気の狂った光君、この人をそうっと思って居る紅、只乳母と云う名のために心配して居るもの、朝から晩までつききりについて居る紅をうらやむ女達、斯うしたいろい
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