んなことを云いながら涙をこぼして居た。女は何も云われないほど気がふさいでしまって居るので皆てんでに溜息をついたりかなしいうたをうたったりして居る、只どうしようどうしようと思うばかりでそれをなおす手段などと云うものは思われないもので有った。
東の対では女達がいくら沢山居ても光君は紅と乳母にほか世話をさせないので只手をあけて淋しいかおをして御経をよんだりいのり文を書いたりして暮して居る。光君はあかりをハッキリさせることはこの頃大変きらいになったので明障子も生絹にかえたので昼中でも部屋の中はうすぐらい、その中に香はめ入るようなかおりを立てて居る。紅の姿や乳母はすっかりおとろえた形になってしまった。やせてつかれた紅はその姿がますます美くしくなった。
「夢の国へ――、夢の国へ、私はあこがれて居るのに」
人形を抱いたまま美しく化粧した光君は云って居る。
「あの衣をしたててそして着せて御上げ、それから髪も結ってネー、マア、あんな可愛い声で笑って居る、うれしいから? 何だか分らないネー、桐の葉がしげって、夏が来て――、うれしい? かなしい? なつかしい方」
わきに居る紅と乳母はソッとかおを見合せ
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