ない、気のよわい母君はその姿を一目見た許りでそこに気を遠くしてたおれてしまった。兄君は美くしいしかし物狂おしい光君の手を取って、
「浅ましい姿になってしまった、私は貴方自身よりも悲しい思がする。たった一人しかないこの兄のかおが貴方に分るの」
かおをのぞき込んできくと光君は声をふるわせて遠くを見ながら、
「紫の君ほか私にやさしい言葉をかけて呉れる人はない。オヤ紫の君、彼の人がそこに居るじゃあないか、誰がいじめたのだ、そんなによわった様な姿をして居るじゃあないか、どこも痛くないの」
と自分の持って居る人形の手をにぎって肩をやわらかくさすって居る。そのいじらしい様子を男の兄君さえ見て居ることが出来なかった。母君は言葉もかけないですぐ女達にたすけられながら西の対へかえってしまわれた。兄君はしばらく女達にいろいろの意得なんかを云って居られたけれ共、
「出来るだけ早くもとの様になって下さい、私の一人しかない美くしい弟の人よ」
と云ってそのつめたい手をそうとにぎって涙をこぼしながらかえってしまわれた。女達はだれでもこの光君を大切に親切にあつかったけれ共その中でも目立ったのは先の夜に種々のことを問わ
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