。女はそれを光君の前に置いて、
「どうあそばします、御手伝いいたしましょう」
「あっちにおいで」
若者はそう云ったまま人形を抱いてつっぷしてしまわれた。女は見かえり勝に几帳のそとに出た。女はそのことを乳母に耳うちをした、乳母の目は急にひかってぬき足をして光君のわきに行って見た。急に身を引いて女達の居るところにかえって来た、乳母はそこになきたおれてしまった。女達は口々に、
「どう遊ばしました」
ときき乳母は涙にむせびながら、
「とんだことになってしまった、光君様はとうとう気が変になっておしまいになった」
漸くこれだけ云った乳母は前よりも甚く泣いて居る、女達はかわるがわるのぞいては泣いて居る。
「マア何という御いとしいことだろう、息もかよわない人形に紫の君の衣をきせて生きて居る人のようにしっかり抱えて何かしきりに云っていらっしゃる」
若い女達はもう自分の気も狂いそうに悲しがって居る。悲しい重い空気はこの美くしい部屋に満ち満ちてしまった、その事はすぐ西の対へも東の対へも知らされた。母君と兄君は目を泣きはらしながらすぐに馳けつけて来た。几帳はどけられて女達は何を云われても返事をするものが
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