で光君の後に居ることは知って居たけれ共、知らないように髪一条もうごかさなかったことは恋に盲いたようになった光君にはわからなかった。光君はソーと女君のわきに座った。女君はまだ下を見たまま手を動かして居る。男君はおちつききった女君の様子におどろきと悲しみを一時に感じながら、
「紫の君、私をお忘れにならないでしょう、どうぞその顔を上げて下さい」
 女君の手はまだ動いて目はまだ下を見て居る。
「私はあなたに『心から』とまで云われました。それでもそれでも私は忘られなくて、忘られなくて、しょうこりもなく又来たんです、こりのないいくじのない男だと貴女は思って居らっしゃるでしょう、けれ共、恋する男の因果ですもの」
 女君の手はとまって目は油断ないようにかがやいて居る。
「貴女はまただまって居らっしゃる、だれがその美くしい唇を封じた様にしました、誰が貴方、何故そんなに無情なくなさるの。私は今なこうにも涙はかれ悲しもうにも心が乱れて私はもう死ぬばかりになったんです、今、私は死ぬ事をどんなによろこんで居ましょう、私はよろこんでるんです、貴女のために死ぬことを」
 涙を一杯ためて心のままを女君に云った光君は恐
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