愛いいこと」
などと云い合って居た。夜になった、光君はそうと几帳のかげから出て、
「又行って来る、また只かえって来るかも知れない、私見たいなおく病ものは又とないだろうネー」
などとかるい口振で云って微笑を浮べながら出て行った。後を見送った女達は、
「今日はまア何と云う好い元気で居らっしゃるんでしょう、いつもこんなでいらっしゃるといいんですけれ共ネー」
「ほんとうにですよ、今度いらっしゃって又|無情《つれな》くされていらっしゃると又どんなにお歎きになるかそれを思うと私はたとえ様もないほど悲しいんです」
と乳母などは云って居た。

 光君は障子の前に立った。ソーと引いて思いきった様に身を入れて几帳の中へ身を入れた。女君は後向になって机によって何か余念なく書いて居る。手のうごく度に美くしい衣ずれの音のなつかしいうつり香を送る。光君はとどろく胸を幾重もの衣につつんでしのび足に紫の君の後に近づいた。そしてソーとそのすぐうしろに立った、まわりに一人も女が居ない。男君は女君は自分の居るのを知らないのだと思って居た、けれ共からだのすみずみまで鋭い神経の行きわたって居る女君はその高い衣の香と衣ずれの音と
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