衣ずれの音は仄赤い灯の色と交って魂の遠くなる様に光君の身のまわり心のまわりを包んだ、戸をあけた人はまだ思い切って几帳の中に入ることは出来なかった。いきなりサヤサヤと云うかるい衣ずれが耳のきわでひびいた、夢中でつと身を引いた光君は障子をしめてそとに立って居た。
「夜になってから」
光君はそう思って光君は西[#「西」に「(ママ)」の注記]の対へ自分の部屋に歩をうつした、歩きながら、
「こんなに思って居ながら自分は何故彼の人の部屋に入り込むことが出来ないのだろう」
と不思議にふがいない様に思いながら自分の部屋の戸を開けた。そこには乳母と女達が四五人丸くなって世間話をして居た。いきなり光君が入って来たので女達はきゅうにバっと開いて、
「マアどう遊ばしたのでございますか」
「彼の方はどう遊ばしました」
と云う言葉はつづけ様に女達の口から出た。光君は恥しそうに、
「私は――笑っておくれでない、私は何んだか恐ろしい様で中に入れなかった、夜になってからでも行こう」
と云ってくるりと身をかえして几帳のかげにかくれてしまわれた。
女達は目を見合わせながら、
「まアなんと云う幼心な御方なんでしょう、お可
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