がやいた、歌の声を止めて一つ一つふえて行く燈火の光を見つめて居た。自分の目ざす部屋には中々燈火の光が見えなかった。
「マア何と云う察しのない事だろう、私は彼の人の部屋には一番先に燈火の光が見える様にと祈って居るのに彼の可愛ゆらしい童も私の心は知らない」
誰にもはばからず云った一人ごとも歌声と同じように桜の梢に消えた。小供の様に待ち遠しがる光君は目でも瞑って居たら一寸でも早くなった様に感じるかも知れないと、かるく目をつぶってうす墨でぼかした様に立って居る桜の梢に身をよせた。廊を歩るくかるい足音や小さい童の女達にからかわれて高い声を出してかけて行く音などがともすれば流れ出しそうになる光君の涙を止めて居た。時々そうと目を開いて彼の人の部屋の障子を見たけれ共なかなかなつかしい様な燈火のかげは見えなかった、その度に光君の悲しさはまして行った。三度目に目を開いた時美くしい灯かげは障子を美くしくそめて居た、光君は嬉しさに満ち満ちた身をおこして元降りた階を昇った。そして又もとの様にそうっと明障子を引いて見た。沢山の女達は湯殿に行ったと見えて二三人の女が居るらしいなつかしい衣のうつり香と白粉のかおりと
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