のを几帳の陰できいて居た姫は馬鹿にされたようないやな気持で居た。それから女達の話は急に変って常盤の君の噂になった。
忍び合って通っていらっしゃるかかりうどの御兄弟が弟君の来て居らっしゃるところへ又兄君が知らないでしのんでおいでになって大騒をしたの何のと面白がって云って居るのをきいて女君は浅間しい事だと悲くて、
「どうぞその話はここだけでよその人に話すような事はしないでお呉、私の恥にもなることだから」
と云ってすすり泣きをして居られるので女達は申しわけのない様に一人立ち二人立ちしてあとには乳母とその娘ばかりが残った。乳母は今の中にと思って女君のそばによって几帳をすっかり立てまわして声をひそめて、
「姫様貴方御考えになりましたか」
と生真面目な様子できく。女君はまぶたがうす紅になって、艷な顔をそむけるようにして、
「幾度云っても同じ事」
と絶え入るように云って扇で顔をかくしてしまわれる。その様子が又なく可愛いので強いことも云えず、ぐちっぽく一つことを二度も三度もくり返してはたから見て居る自分達の心もとなさや、後のためにもなどと久しく話していたが結局は光君によい返事をするようにとすすめるの
前へ
次へ
全109ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング