ことを云い出した。
「貴方この頃どうしたの、かくさずと教えて下さいナ、大抵は私だって察して居るんだもの」
「別にどうもいたしません、何を察していらっしゃるの?」
「だからかくして居ると云うんですよ、貴方は思ってる人が有るんでしょう」
「有ったってなくったってそんなこと……いくら貴女が心配して下さっても人の心は思うようになりませんもの」
「だって、そんなに云うのがいやなら、何だけれ共――どうにかなるかと思ったものでネー」
光君は母君の自分をいかにも子供あつかいに何でもかんでも自分で世話しようとするのがいやなような心持になった。
「こんなことで段々私達母子ははなれるんじゃああるまいか」
こんなことも思って見た。
「何でもかんでも母にきかせてよろこんで居られない自分は不幸なのかも知れない」
こんな思いもあとからわき上った。いろいろな思いはわかい柔い心の前をはやてのようにすぎて行く。光君はだまって目をつぶって心をしずめようとして居るところへ兄君が入って来た。
「オヤ、マア、珍らしい方が見える。貴方はこの頃大変風流な御病気だそうだけれ共まだ死んでは割が悪そうですよ」
坐りもしない内からこ
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