んなことを云う。
「そんなことをおっしゃるもんじゃあありませんよ、私は何でもなくってもはたでそうきめてしまうんですもの」
 幼心な光君はまがおになって云いわけをするとそれを又からかって笑いながらからかって居る。
「貴方の姿が美くしいと云って沢山の女達が思って居ると云うことですネー。私なんかはどうかして思われようとつとめてさえどうしたものかたれも思ってくれない、たまに思ってくれる人が有ると思えば下の下のうずめの命よりなお愛嬌のある人なんかなんだもの、貴方はよっぽどまわりあわせの好い日に生れたに違いないネーそうでしょう」
「まわりあわせが好いんだかわるいんだかわかるんですか、人の思うよう思わせておきましょう」
「大変さとったことだ事、でもさとりをひらいたようでさとれないのが人間の好いところだもの」
 こんなことをいい気になってしゃべり立てて居る。
「一体女なんて云うものはいろいろ男に察しのつかないところばかり沢山有ってね」
 いきなりとってつけたようにこんなことを云い出す。
「そうでしょうか」
 光君は幼子のようにびっくりしたかおをして話をきいて居る。
「だけれども又そこが好いとこかもしれ
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