して家の方にあるき去った。物かげの小男はなんとなくあっけないような心持でそのあとにつづいた。
 前にもました、重くるしいかなしい心持は家の中にみなぎって東の対の女達が光君のものために同じような黒い衣物を着て居るのはよけいにいたいたしかった。
 その日の晩、東の対の光君の御部屋からと云って童が一つしっかりと封じた文をもって来た。何かといぶかりながら上包をとると、
「私からうちつけに文などをさしあげましてまことに恐入りますが、私の心に同情下さいますなら御開き下さいませ、もしそうでございませんならこのまま御すて下さいませ」
と紅の手でこまかくうす墨でかいてあった。殿は好奇心にかられて中を開いた。細かく長く書いて有る、はじから順々によんで行くとこんなことが書いてあった。
「どうぞ御ゆるし下さいませこんな失礼をいたします事を。私は今までどう云う心持で暮して居ったかと申す事を御はなしいたそうと思いたちましたので……何故と云うわけは御きき下さいませんように。私はどんな身分で今までどんなかなしい事に出合ったかと申すことも御存じでいらっしゃいます。私は……まことに何な事でございますが、光君様を御したい申
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