にはいられない。その未熟な事は、勿論芸術的経験の乏しい事にも依る。然し、創作も、筆先の器用さでのみ決するのを正としない自分は、どうかしても、自分と云うその者の本体の裡に戻って考えずにはいられなく成るのである。
 男性の中にも、下等な心情の人はある。従って、下等な心情の作家もあり得る。そこ許りを見て、私共にはあんな事を云いながら、とは云うべきでないだろう。
 人類の文化の進展は、未来に私共の心も躍るような光明を予想させる。従って、自分は自分等人類の未来と共に、この僅かな一節である自分並に、他の多くの女性、女性の芸術家たらんと努力する人々の未来に就てここでは一言も触れようと思わない。
 只、現在は、確に或る点まで肯定しなければならない女性の芸術家の貧弱さは、どう云う原因を内に蔵しているのだろうと云う事を、考えて見ずにはいられないのである。
 女性の作家が妥協的で easy−going だと云う批評は加えられた。然しそれなら何故、そう云う傾向を持っているのだろう?
 反省なしに、私共は総ての発達を予期する事は出来ない。

          三

 先ず、女性の作家に加えられた評言に就て反省
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