チと立上り、考えを変えようと、頭を振り。
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みさ子 さあ……もう議論はやめ。――紅茶でも入れさせて来ましょうね。(去る)
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沈黙、穏やかでない雰囲気の裡に、谷、英一、顔を見合せず、動かず、幕。
第二 庭
常緑樹の深い植込み。間を縫って、奥の方に小径があり、上手、屏風のように刈込んだ檜葉《ひば》の下には、白い石の腰架《ベンチ》が一つある。
傾いた午後の日が、穏やかに明るく、緑樹の梢、腰架の縁などを燦めかせる。
幕開く。
みさ子、谷、上手の方から悠《ゆっ》くり連立って出て来る。
[#ここで字下げ終わり]
みさ子 あの薔薇だって、爺やが丹精してくれるから綺麗に咲いたのよ。私も、奥平もいっこう構わないんですもの。
谷 ここはいつも気持がようござんすね。(四辺を見廻し、腰架に掛ける)
みさ子 (離れて立ったまま)英一さんはどうしたんでしょう、直ぐ来るって云いながら――
谷 奥平さんに用があるんでしょう。(皮肉な調子)
みさ子 奥平に? そう? ちっとも知らなかったわ。それならそうおっしゃればいいのに――。妙な人!
谷 そう、くささずに置
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