ニいう人なら、ざらにあるわ。ちっとも面白くない人だっていいから、気持の満干が、ぴったり両方で合うということが大切だと思うわ。
谷  気持の満干そのものが、既に感情の弾力じゃあないかな。活々した流動を起すには、いささかの冒険、心もとなさが、入用だというのです。
みさ子 貴方は――こうなのね。この人が厭で詰らなければ、また別な人、という人の方が変化があるとおっしゃるんでしょう?
谷  たとい、実際行ってしまわないでも、それだけ張《はり》のあるということですね。
みさ子 まあ一寸風をする、というの? いやあね。私そんなのは嫌いだわ。行くんならほんとにさようならをするほかない、いるんなら、どんなにでもしている。――
谷  それで――あなたは後の方だ、とおっしゃるんでしょう?
みさ子 (殆ど痛ましいほどの顔をし)あの人ほか私に大切な人はいないんですもの。
谷  その大切さを奥平さんにも感じさせるためには、あなたが、もう少し彼の方を、はっ、とさせなければ駄目です。自分の心には、今二つの愛がある。そのどちらを取るかというようなことで、彼の方を、もうちっと反省させ苦しませて上げるのです。しんから、ほん
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