云えないけれども。つまり、こういうことになるのね。或る人が、誰にきかせても、正しいとほか云われないような考え[#「考え」に傍点]を持っているとするのよ。考え[#「考え」に傍点]よ。友達の間は、或る程度まで、その考え[#「考え」に傍点]だけで、つき合い調和して行けると思うわ。けれども、結婚した生活では、その考え[#「考え」に傍点]と、実際の物事に触れて起って来る、その人のしんからの心持[#「しんからの心持」に傍点]とが、どの位ぴったりしているか。それが直接の問題になって来るのね。だから、いくら、その考えが、思想なり、理論なりとして間違ったものではなくても、自分が、事実、胸ではこだわっていながら、正直にそれを見ないで、自分も相手も、ただ理攻めにしようとするなんか、ほんとに堪らないわ。
谷 (真面目になり)あなたの話しようが、ひどく抽象的だが、人間が純粋か不純粋かということが、第一の問題だということでしょう?
みさ子 そうね、そういうことになるでしょう。
谷 昔から、殴られても、実意のある亭主が好いというのは、そこでしょう。
みさ子 ――とにかく、厭なら厭、好いなら好いで、蕊に一点の曇も
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