いことの舞台としてしまうところはないだろうか。
家庭の二十四時間にはその上に、どっさりの台所の用事もついて来る。洗濯盥の権利も主張される。それらは今日の私たちの生活の上で決して手綺麗にすまされ処理されることがらでなくなって来た。若い主婦はいかに明敏であろうとも、八百屋に足を運ぶ度数を減すことは出来なくなっている。
今日の若い世代の、よりよい結婚生活、家庭生活の願いは、一方で、ますます加わって来る困難な条件をはっきり見とおして、それらの困難にめげない人間の成長への確信に裏づけられなければ、やってゆけないだろうと思える。
狭く一つ洞の中で互いを暖め合う男女の一組としての睦しさだけでは、云わば最も生物らしい情愛さえ保てない時代になっている。今日の若い良人と妻とは、歴史が私たちにめぐり合わせているこの地球全体の動乱から自分たちの結婚生活が影響されないと思ってはいない。自分たちの愛で自分たちの善意で結合が完うされるものだという素朴な事情で考えてはいない。自分たちの心からなる希願と愛とにかかわらず、どんな突然の変化が自分たちの生の上におこるか分らない。そういう現代の嵐の中に私たちの生は営まれ
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