ているのである。
 人と人との真心のこもったいたわり、饒舌でない思いやり、骨惜しみない扶け合い、そういうものが新しい結婚や家庭の生活にますますゆたかにされなければならず、そういう潤沢なあふれる心は、つまり今日の波濤の間で私たちの明日が不測であるからこそ、今日を精一杯によりよく生きるための努力を惜しまずよろこび、愛して生きて行こうとする強い意志と、明るく光りに射とおされた理性の調和から湧き出すのであろうと思う。
 よりよく生きたいという人間本来の念願を私たちのものとして生活の中に実現してゆくためには、目前の不合理そして又自分たちの非条理で失望し引き下ってしまわないだけの、大きくつよい息が必要である。[#地付き]〔一九四一年十一月〕



底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年7月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
   1952(昭和27)年8月発行
初出:「女性生活」
   1941(昭和16)年11月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
青空文庫作
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