手を執ろうとする)お前はエッダだよ。ね、俺が、死んだ親父の息子のヨハネスの通りに。ね。
エッダ (いよいよ笑い)お猿さん! 人の真似する痩猿さん!
[#ここから4字下げ]
ヨハネス、さっと立ち上る。エッダ面白そうな声をあげ、逃げようとする。ヨハネス突立ったまま、堪えられないように低く呻き、髪を掴み、いきなり顔中を動して、ほんとに獣のような相貌をする。
[#ここで字下げ終わり]
エッダ (中腰になったまま)あら!
[#ここから4字下げ]
ヨハネス、いきなり体中の力を入れて、エッダを捕まえようとする。エッダ怖れ、叫び、飛ぶように、扉《ドア》の方から室外へ逃げる。母親、驚いて椅子から立ち、扉の方とヨハネスとを見、
[#ここで字下げ終わり]
母親 どうしたんだい一体。何をしたの?
[#ここから4字下げ。鍵括弧のついた台詞のみ、3字下げ。]
ヨハネス、黙って突立ち、眼をしばたたき、まるで絶望したように、くしゃくしゃ顔を歪める。 幕。[#「幕。」は地付き]
第二 その夜、ヨハネスの部屋
上手に小さい窓。下手には入口、低い寝台。正面に衣裳箱、上に四角な鏡を立てかけ、燭台、聖書、櫛等置いてある。中
前へ
次へ
全13ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング