阿父さんは今日も帰らないの?
エッダ もう二晩泊るんだって。――町から来た人が阿父さんの言伝てを持って来たわ。
ヨハネス 今度の市には、俺《わし》も行って見たいな。――エッダ、一緒に行かないか?
エッダ どうするの?
ヨハネス 賑やかな市街《まち》の様子を一緒に見るの――何か買ってあげるよ。
エッダ 詰らないわ。阿父さんは、町の女や男は、それは、それは、小ざっぱりとしているんだって云ってよ。もう種々《いろん》な物を一杯飾った店ばかりなんだって。――そんなところへ行って、たった一本|飾紐《リボン》位買ったって――それに、着物もありゃあしないわよ。
ヨハネス 衣裳なんぞは、俺もないけれど――綺麗なところを一緒に見るのはいいじゃあないか、皆俺たちの物ばかりだと想えばいい。
エッダ (おかしがって)ははははは、たった一クローネで? はははは阿母さん! ヨハンたら、たった一クローネで、市中の物を買い占めるんだって!
母親 (美味《うま》そうに湯気の立つスープを鉢によそい)さあさあエッダ。ヨハンは原っぱで腹を空かして来たんだよ、喋って許りいずに――。
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エッダ、ヨハネスと顔を
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