自分のうそ(誇張)
十二月十四日、
石橋さんが来たので林町に行きとまり、翌日午後かえる。A前日から風邪のきみ。かえって見ると床について居る。
「いろいろ話し、石橋さんが、
『貴女可愛がられて居ますね』と云ってよ。何故ってきいたら、
『女の人は大抵結婚すると、此処に皺が出来るでしょう』(目尻をさし乍ら)って、そして、『ふふうむ』と云って見て居るの」
と云った。
肥ったこと、その他は話したが、実際に於て此那会話はなかった。
私の想像が働きすぎ、アユ的ウソと云うに近いものとなった。
Aに媚びようとしたのではないのに。――
原因は、(イ)[#(イ)は縦中横]Aに床につかれて居るいやさ、down hearted だと思ったこと、
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(ロ)[#「(ロ)」は縦中横]実際うちにかえって愉快だったこと。
(ハ)[#「(ハ)」は縦中横]思いがけずとまって気の毒だったこと――自分はこの頃、女中とだけ居る淋しさつまらなさを理解出来るから、
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それ等が、刺戟となって口に出たのだ。考えて見、自分でおどろく。少し悲し、少し面白し、悲しい方がつよ
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