すか」
A「ちっともたべられやしない。皆ぼくのきらいなものばっかりだ。」
Aはきかれると何でもよい、どうでもよい、と云うくせに、心持ではちっとも何でもよく、どうでもよいのではない。自分の思うようでないと、不平を洩す。故にする方は、前もって、その底まで考える必要あり。陰性の我ままと云うべし。
自分とT先生との心持
自分とT先生との心持――寧ろ、自分のT先生に対する心持は深く、強く、ごまかし難いものだ。
師弟の関係に於て何かのよいきっかけを見つけ、書きたい。
この心持、佐藤春夫の見失われた白鳥の話にある。
「妙に根本的に考える」私の性癖によるのだ。
○敏感すぎる夫と妻
妻、ひとりで家に居、女中が留守になったので朝食事の用意を簡単にする為、オートミールでもあればよいなと、考えて居る。――夫の着物を火鉢にあぶったり、炭をなおしたりし乍ら。すると、玄関があき夫がかえって来、「今日明治屋によって来た」と云う。
「まあ! 珍しいのね、どうして」ふっとオートミールのことを思い出し、ふざけ半分にきく
「買っていらしったもの、当てて見ましょうか」
靴をぬぎつつ
「う
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