の方の打算なしにおやりになってしまうところが一寸変って居ますわね。ね、一寸出来ませんわね、」
西「それにあの人は、男の人が、女と云うことを忘れまるで平気にあの人と議論するし、伊藤さんも他の人とは異うと寛大にしていらっしゃるので、あの方はそれをかん違いし、皆、自分を愛して居るかと思いなさるのですよ。だから男の人が、そんなに思われて居るのは迷惑だって云います。あの人は私共の仲間の愛嬌ものですよ。」
          ――○――
 私の思うのに。
 このことは、愛嬌以上だ。朝子の方は所謂醜女の深なさけで、男が、女と思わず手にさわり喋りするのを、自分が卓越して居る為とか、愛されて居る為とか思って幸福に人生を麗らかにして居るところ痛ましきかぎり。又良人が自由にさせたい通りさせて置くのを、一層深き理解と愛の為と思い込んで居る女の愛らしさ。殆ど涙の出るものがある。
 その関係を書いて見たい。なかなかむずかしい。

     Aの「かまわない」

△「何をあがりますか」
A「何でもかまわない」
 食事になる。終りに近づいてから。
A「今日は僕のすきなものばっかりだ。」
△心でよろこび「そうでございま
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