からそれは自覚して居ましたから、その男の人がほかに好きな女の出来たとき、やっと、役目のすんだような気がしました。
          ――○――
 自分の浮気を押えようとして居るうちは、まだ浮気は小さい。
 私などは、人間は浮気に出来て居ると思って居ますよ。

     西川文子氏の観察

 あの人は告白病にかかって居るのです。どんな女の人でも経験することだのにあの人は、ああ云う頭で、ひとからまるで特殊な生存あつかいにされるため、その経験を特別なもののように告白せずには居られないのですね。私はよく云うんですよ。
「貴女が考えて居る位のことは皆誰でも考えて居ますよ。ただ黙って居るばかりです。だから貴女もだまって居たらいいでしょう」ってね。
 あの人は、あの告白病で雑誌をつぶして居るんですよ。
 先も、あの人がお国へかえって居た間に伊藤さんがほかの女の人に手紙をやったと云うことで大層なけんかになって、それを雑誌に書いて、うんとことわられてしまったでしょう。
 今度だって貴女、変な若い男と何だかで、それを又、雑誌に告白し駄目にしてしまったんですもの。
三宅「そう云う風に、くらりと告白し、雑誌
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