◎
宮原氏と原稿の話をした時、二十四字づめを使って居ると云うと
彼は
「それ丈は一寸違って居るんですね」と云った。
自分は、軽い、而し鋭い侮蔑[#「侮蔑」は底本では「悔蔑」]を感じた。
◎
六月の若い栗《クリ》の梢に、黄金の軽舸《カヌー》のような半月が浮んだ。
◎
彼は、自然や小さな動物を愛し、金魚を飼い小鳥をかいし乍ら、庭に犬が入ったり、蟻が出たりすると、狂気のようになって追い廻す性質だ。
七月二日
梅雨がもう少しで上ろうと云う日、二階から茂った梧桐や槇の葉ごしに見える空は、どんよりと曇り、底に雲母のような明土を湛えて居る。私は、ぼんやり右往左往に入れ乱れ、房々、涼しそうな葉をつけた梧桐を見ながら、隣家から聞えて来るダンス・ミュージックを聞いた。余韻の乏しい、妙に機械的の音が、賑やかならば賑なほど心の憂鬱を誘うようだ。
忘られぬ印象
一、Oさんを m. m 大学に訪ねる。
二、翌日来。
三、父 門のところで会ったのをだまって居、帝国ホテルの音楽のかえり、ボサンケットのことから会
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