大震があり、東京は三分の二焼けの原となった。
この為に、種々の思想的変化が生じた。
一つ自分の家について考えて見ても、今迄よいところがあったら移ろうと思って居た心持がすっかりなくなり、この家でもありがたく愛し、出来るだけ心持よくして落付いて棲もうと云う心持になった。
私共は壁を紙ではり、台所のテーブルの工合をなおし、私の机の前にはカーテンを下げ、すっかり落付くようにした。
考えて見ると、人間の主我的なところと、ハムブルな弱いところとをよく現して居る。こんな家でもあった丈有難く思う謙遜さ またそれをもっと快適なものにしようとする我ままさ。
――○――
◎私は自分が、空想に支配され、いつも目の先にあらゆる壮美なもの、崇高なものの幻を描きながら、毎日は手をつかね坐り、ぼんやり思いに耽って居る種類の人間であるのを知って居る。反対にAはいつも彼の手か足かで、家中の何かを動し、片づけ、ぬり、たたきして生活に必要な準備を調えて居る。
八畳の隅を一つの大きな本棚と一つの本立て、本箱とで区切った勉強部屋の卓子の前に坐って、小説をよみ、空想に耽って居るとき、ふと、コトコトと何
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