と(泥土)の中に斯う水が入ると、火が起って地震になると云うことですいの」と云う。
 それでも夕暮になると雨もやみ、風もしずまり、すっかり秋らしい虫の声とともに、西日がさし出した。
 二階の三尺幅の※[#「片+(總−糸)」、第3水準1−87−68]から見ると、すぐ目の前に、大きな蜘蛛がしきりに巣を張って居る。
 その時期を見ることに正しいのと、いそがず、うまず、自分の体の重みで具合よく張った糸にからみついては巣をはる様子に、蜘蛛の智慧と云うようなことを思った。

     九月三日

 夕立。
 東京には、伊豆大島の近くの海底に地すべり地震があったと云う。大地震、火災、つなみで林町も青山もどうなったかわからないと云う。(一日の昼十二時から)
 今日夕立が来。
 二階から見ると、足羽川の堤が木の間から見え、元は、いつも見える山がすっかりかくれてしまって、一面水っぽい灰色なので、まるで海につづいて居るような感じがする。Aは、福井市へ電報、帰る汽車その他のうち合わせに行って居る。烈しい東風雨[#「東風雨」はママ]で恐らくかえりはおくれるだろう。

     十月十四日

 九月一日関東、湘南に
前へ 次へ
全18ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング