つかない。百合ちゃんは始めっから、うそをついて居る。
私。……(沈黙)、暫く後
グランパは、冗談に惨酷なことでも平気でおっしゃるわね。
(その時自分の心持は、自分ならああは云うまい。欲しいものも欲しくないものとして自分の為に、貧しいなら貧しい生活に行った者に、そんなことは云うまい。思いやりのない、ひとを Hurt することの平気な、一寸した正しさの自己満足にひたりたい、低劣な心持、いかにも彼のいやな部分が出た、と感じた。)
後二階にあがり 此を書き乍ら
一方云うと、Aの言葉は自分の中心をついた為、惨酷に感じたのだと考えなおした。
自分が安のんな生活から云々と云う考えかたも滑稽に、且センチメンタルで、自分の不徹底を示して居る。
うんと金をつかってのさばって生活したいのなら、金持の妻にでもなれ。
平気で意義ある貧乏をするなら、平気で、書生の気でしろ。
自分は、少しは金も持ち、謙譲の美徳を自覚しつつ、感傷性を満足させる質素さに居ようとするのだ。如何にも小心な中流人の心理。
Aは生活にもまれ、自分をいざと云うときに守ることになれ、どん底に落ち切って居るから、或時、生活に対す
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