電信局の建築場では、労働者と荷橇馬が出切った木戸を、つけ剣の銃を手にもった若い番兵がしめて居る。彼の頭の上につられて居る強力な電燈が凍った雪の上に、垂直に彼の影を、きたない、大きな皮外套の裾の下に落した。

 ○夜八時
 ストロー※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ヤを出たら、煙が街にあるようで、段々それが濃くなった。霧。

     四日

 橇の馬の体に汗が凍って、毛が真白に凍って居る。
 人間の男の髭も白い。
 午後三時雪が、労働新聞社の高い窓の一つを焔のように燃え立たせた。
 ○降誕祭には開いて居た教会の正面の扉に、錠が下ろしてある。
 外壁に沿った裏通りに古本屋が露店を出し、空屋に店を出して居るところにモーランの夜開く、武郎の或女、ゾラの小説がさらしてあった。
 ○壁の厚さの感じ。

     五日 ひどいモローズ

 プーシュキン・ブル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ールの樹木が皆真白になった。そこを、黒く多勢の人々が歩いて居た。人々は小さく見えた。

 白い風景の中にレーニン・インスティチューションが直線的に立って居る。その空に月が出た。

     イムベルのと
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