「Y+Y」、499−11]が忘られない程の親切をしても忘れ、泣くほど腹の立つことをしても忘れてしまう。そういうたち。
    又
 ○Yは、人生は何か、人間は何故このように生活するか、その目的意味などについて、考えたことなし。若い頃、実生活の内にある矛盾――例えば悪いことをする男が社会的高位につく、なぜか、それではわるいのではないか等、そういう風に苦しんだ。道徳性によって。
 然し、社会の高い位置というのが、果して人間的生活の上で高い位置か、とは考えるたちでなかった。――哲学的ならず。
 然し、三十三の今、そういうものが大して本当に価値もないものだと知って居る。その原因は、下らぬ奴でも或社会人としての力量さえあればその位のものにはなれると、わかったが故、又実生活の経験が、その地位で人間的苦悩を癒し得ず、却ってそれを増すのであることを知ったため、
 然し、絶対に比較しての哲学によってそう判断するのではない。
 ※[#「Y+Y」、500−4]は、このような問題を哲学的に考える。国家というものについても社会についても。故に、超今日[#「超今日」に傍線]の批評生ずるなり。Yとは、この現代の評価
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